分断についての拙い考察

去年の夏休みのことです。 私は、祖父の故郷で最近の芥川賞受賞作と、川端康成、 芥川龍之介の作品を読み耽っていました。 それらを読みながら、深く、考えていたのは「分断」 についてです。 「貧困と富裕」「白人と有色人種」「性をめぐる差異」「人と人」…

脱げない服

私は誰かに、「この服を着よ。」と命じられた。その命令は絶対で、「嫌だ。」とは言えなかった。いや、私は嫌だという感情すら持っていなかったかもしれない。命令に従うことだけが、出来ることだった。 誰かが選んだその服は、似合わないように思えた。だが…

ものさし

僕は、いつだって「ものさし」を忘れている。 人と人との関係には、いつも距離がある。その距離は、関係性によって様々で、遠く離れているものも有らば、近く感じられるものもある。 その距離を、僕は、感じようとしていない。ものさしを無いものとして人と…

人を殺してはいけないのは何故?

なぜ人を殺してはいけないのか① 人を殺すことは、人間が犯してはならない禁忌の一つとして、いつの間にか、僕の意識に深く根付いていた。そのため、もっともな理由がないまま、人殺しを禁忌と考えてしまうことが多かったが、今回、この理由について考えてみ…

昆虫の雄雌 実存の違いとはなんだろうか。

博物館に1人で行った時の考察。 ・カブトムシ クワガタが雄雌で全く姿が違う。 雄は、雌と比べ頭部が発達しており、強靭な顎を持っている。そして、種によって顎の形が詳細に見ると違っているように、多様な変化をしている。しかし、雌は体格が小さく、強靭…

いつかの日記

昨日、日記を書かなかった。 僕は三日坊主だった。継続する力などなく、やりきることが出来ない人間。情けない。 なんでこんな書き方をするのだろう。僕は自分への批判をさせないようにしたいのだろうか。 何も思わないで欲しい。それが一番の救い。 最近、…

断片

「緊張するのは、自分に自信がないから。 自分に自信がないのは、どっかで自分に期待してるから。 その期待がわからない限り、君はずっと、緊張すると思うよ。」 そういって、彼は、私の前で、人差し指と中指で挟んだ煙草を口元へ運び、おもむろにポケットか…

『夜と霧』V・E・フランクル①

ユダヤ人の心理学者、ヴィクトール・E・フランクルが経験した、ユダヤ人強制収容での実体験の物語。 心理学者、強制収容所を体験する 強制収容所には、カポーをはじめとした、特権を持つ「エリート」被収容者から、彼らに見下され、食事もままならない「知ら…

『いじめ自殺~12人の親の証言~』鎌田慧著 感想

この本は、自殺してしまった少年少女の遺書の紹介(公開)とともに、なぜ彼らが死を選んでしまったかの主観的な考察が記されている。 この本では、亡くなられた児童の保護者が直面した、社会が作り出す、不条理が描き出されていた。 例えば、自殺した生徒が…

『グッドバイ』太宰治

太宰の最期の長編小説。 未完の小説。 この作品は社会を悲観し、嘆いた作品を多く書きだした後期の作品であるものの、悲観よりかは楽観的に書かれ、読んでいて明るくなれる作品だった。主人公の特徴には、太宰自身の影を帯びている面も少なからず感じるが、…

『饗応夫人』太宰治

「私、いや、と言えないの。」 客にぞんざいに扱われ、粉骨砕身の思いで饗応する夫人を、夫人の安息を願い、客との関わりをやめてほしいと思う女中の視点から描かれた作品。 夫人の断れない性格を逆手に取った大学の先生方の振る舞い、言動が腹立たしかった…

『朝』太宰治

遊ぶことが大好きな主人公。彼は仕事をしていても、友人が自身を訪ねて来ると遊びに出てしまう。 そんな自分を律しようと、家族にも教えていない秘密の仕事場(女の人の部屋)で仕事するのであった。 ある晩、彼はお酒を大量に飲み、帰れなくなる。そして、…

『フォスフォレッセンス 』太宰治

太宰の夢の話を軸にして綴られ、フワフワとした夢心地のような作品。 夢のなかで語られる事柄は雲のような、見えているけど掴めない、そんな風に思わせる内容が多かった。それが「夢」のような雰囲気を醸し出していた。 作品内で夢の妻が質問する。 「正義と…

『冬の花火』太宰治

太宰が描いた戯曲。 人間の廃れた精神を、季節外れで誰からも観られることのない、寂しく灯る冬の花火になぞらえて描かれた作品。 ストーリー 夫の消息が不明の数枝が娘の睦子を連れ、実家へ帰る。数枝の奔放さに呆れた父が彼女へ叱責する。が、数枝も引かな…

『メリイクリスマス』太宰治

ストーリー 笠井が舞い戻ってきた東京は、何も変わっていなかった。その東京で一人の娘と再会する。笠井はその娘の母親と親交(唯一の人と称するほどだった)があり、その人を回想しながら彼女と話す。が、彼女に母親の話をすると、なぜか元気無げな様子だ。…

『悪意の手記』中村文則

紹介 主人公は、大病を治癒するまでの過程で精神を闇に飲み込まれてしまう。彼の内面に抱える憎悪は、彼を人道から背かせてしまう。 自分の罪を意識して生きる彼の視点を通して、人の持つ光、闇。衝動による爆発。そして命について考えさせられた作品。 感想…

『西の魔女が死んだ』梨木香歩

まいのおばあちゃんが死んだ。 まいは突然の知らせに胸が苦しくなる。祖母のもとへ行く途中、祖母との出来事について回想する。 まいは学校に行くことが嫌になっていた。母に正直な思いを告げて、学校から少し離れ、おばあちゃんのもとで生活する。 おばあち…

『火』中村文則

狂いに狂った女性が、医者へ自分の過去を告白する。 火遊び、両親の死、中絶、不倫、欺瞞、暴力、放棄..。 悲惨さに満ちた、あるいは、そう見えるように改変させた、彼女から発される言葉は、僕の内面に燻る狂気という火に油を注ぎ、僕はなぜか、唸るような…

『銃』中村文則

僕はこの作品を読み、人間の欲求のことを考えた。人間は欲を満たそうとする。しかし、その欲は段々と拡大していく、1で満たされていたものが1では満たされなくなり、2で満たしていたが、それでも満たされなくなり..。といった具合で、人間の欲は際限を知らな…

『たずねびと』太宰治

東京の家が罹災し、「どうせ死ぬのならば、故郷で死んだほうが面倒がなくてよい」という思いから、青森の実家へ汽車で向かう、主人公の一行。 その汽車内で何度もいろんな人に窮地を救われた。乳の出ない妻に代わり、乳を与えてくれた恩人。また、籠に入った…

『人間失格』/太宰治

傷つきやすく、自分の存在に悩みあぐね、お酒、薬に溺れることになってしまった心優しい男の一生を記した本。 僕はこの本を高校三年生の秋に読んだ。国語の先生に「今は読むな」という大反対を受けながらも、読み切ってやるという思いで読み始めた『人間失格…

『渡りの一日』/梨木香歩

西の魔女の孫で、決めたことは必ずやり通すまいと、マイペースで、人を慮るのが少し上手ではないショウコとが過ごしたある一日のお話。ショウコが壊していくプランに翻弄されながら、最終的に一枚の絵画へたどり着く。まいはその絵を見たとき、その絵が表現…

【番外編】受験期に一心不乱で綴った手記

センター試験7日前に記した文。 たまにめちゃくちゃ自分を制御できなくなるこの世の全てをめちゃくちゃにしたくなるような、言葉では言い表しにくい感覚だ多分この欲求ってのは性に関するものだろうだが、自分の無意識に根付いて取り払えない 最近は欲なるも…

『遮光』/中村文則

※2019年9月14日読了時の感想です。 遮光の主人公と今の僕には多くの共通点がある。「私」は中村文則の想像で作られた人物であるが、今まで読んできた本の中で一番人らしく、人としての生き方を模索しようと生きていたように感じた。こんなところに書くのは自…

『十五年間』/太宰治

太宰治が、東京で過ごした15年間の生活回想記。 かつて書いた『東京八景』では物足りないと感じ、太宰自身が発表した作品の変遷とともに自分の生活、心理状況を回顧し、書いた作品。 太宰は『思い出』という少年時代に犯した罪の告白を記した小説を書いて死…

『苦悩の年鑑』/太宰治

ある小説家(おそらく太宰自身を模した人物)が自身の考えの移り変わりを記した回想録のような小説。「思想家」の何々主義が白々しく、嘘のようなものにしか見えないと批判し、「私には思想なんてものはありませんよ。すき、きらいだけですよ。」と言う。 戦…

『薄明』/太宰治

とても気弱で、頼りのない主人公が妻と子供を連れ妻の故郷、甲府へ向かう。戦争下で苦しい生活を強いられ、家計に悩みあぐねる中、主人公は娘の結膜炎、そして自分という立ち振る舞いで頭がいっぱいいっぱいだった。娘の結膜炎が治り、目が開く。主人公は、…

『掏摸』

中村文則の第九作品目にあたる掏摸。 この作品でもやはり主人公は深い闇を内面に湛えていた。忠実に描かれた心の闇。その闇を作品を触れることを通して実感することが出来る。 この作品は、掏摸をして得た金で生活をする主人公が、親しい仲間を通してつなが…

『砂漠』

「春」 登場人物の出会いが描かれている。新歓での西嶋の「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって余裕でできるんですよ」という発言はぶっ飛んでいて、壮大な言葉だった。 社会という「砂漠」の中、僕たちは乾きに乾いたのどを潤すように、休息を得…