『グッドバイ』太宰治

太宰の最期の長編小説。

未完の小説。

この作品は社会を悲観し、嘆いた作品を多く書きだした後期の作品であるものの、悲観よりかは楽観的に書かれ、読んでいて明るくなれる作品だった。主人公の特徴には、太宰自身の影を帯びている面も少なからず感じるが、それ以上にその登場人物を批判せず、喜劇作品の人物として軽快に書かれていることに驚いた。僕が読んだ太宰の後期の作品は、自分を模した登場人物を徹底的に批判したものが多い。例えば、『人間失格』はその代表だと思う。自身が内面に抱えていた闇を丁寧に描き出し、そしてその闇を内面から批判する。また、『女類』という小説では、太宰を模しているだろう、笠井という女に打ちひしがれて女への偏見、侮蔑が激しい小説家を第三者が批判する文章。つまり、外側から批判させた小説も書いている。

これらの作品たちを通じて、自分の罪を抱える意識を徹底的に排除したのだろうか。自身と、どうしようもならない日本の現状とを批判しきったのだろうか。そして、それがゆえに新たな世界を見、『グッドバイ』という喜劇が書けたのだろうか。

最後を未完で終わらせるというのもなかなか喜劇的だなぁと思ってしまう。

入水した彼はおそらく、自殺願望を持つ、自身に似た人々へ「終わらない文章」贈ったのかもしれない。彼の最後の「生」への抵抗。

終わらない文章。

永遠不滅!