『苦悩の年鑑』/太宰治

ある小説家(おそらく太宰自身を模した人物)が自身の考えの移り変わりを記した回想録のような小説。「思想家」の何々主義が白々しく、嘘のようなものにしか見えないと批判し、「私には思想なんてものはありませんよ。すき、きらいだけですよ。」と言う。

戦争下で起きた、軍部の暴走を酷く批判、どうしようもない世の中に悲観し、何度も自殺未遂を起こしたことを記してある。

現状の情けなさ、自身の望みを語った文章だった。

「私の今夢想する境涯は、フランスのモラリストたちの感覚を基調とし、その倫理の儀表を天皇に置き、我らの生活は自給自足のアナキズム風の桃源である。」