『冬の花火』太宰治

太宰が描いた戯曲。

人間の廃れた精神を、季節外れで誰からも観られることのない、寂しく灯る冬の花火になぞらえて描かれた作品。

 

ストーリー

夫の消息が不明の数枝が娘の睦子を連れ、実家へ帰る。数枝の奔放さに呆れた父が彼女へ叱責する。が、数枝も引かない。そして、父の怒りが頂点に達した時、サッと身を引き、二階へ行き、第一幕が閉じる。

 

二階へ行き、娘を寝かした数枝はある男、清蔵が外にいるのに気づき、部屋に入れる。すると彼から数枝への長年の思いを語られ、仕舞いには求婚の申し出をされる。数枝はそれらを頑なに否定し、拒む。だが、彼の方もすんなりとそれを受け入れはしない。それは、出刃包丁を取り出し脅すほどであった。

暴走した彼を襖の裏にいた数枝の母、あさが撃退し、第二幕が閉じる。

 

親孝行をすると告げる数枝、書き途中だった手紙をあさに読み上げ、自身の身の上、内面、東京にいる男への想いを明かす。秘密を明かした数枝に、あさも数枝へ秘密を明かす。その明かされた秘密に数枝は、怒りに身を任せるように堕落していくと決めてしまうのであった。

全て理想は、ばかばかしい冬の花火

電報を告げる配達人の声が響く中、幕が閉じる。