『遮光』/中村文則

※2019年9月14日読了時の感想です。

 

遮光の主人公と今の僕には多くの共通点がある。「私」は中村文則の想像で作られた人物であるが、今まで読んできた本の中で一番人らしく、人としての生き方を模索しようと生きていたように感じた。
こんなところに書くのは自分をまた不利にするだけだが、自分も遮光の主人公と同様に内面に闇を抱え込みながら、また、実際に持ちながら生きている。だからこそ、内面と外面に闇を抱えた人物を主人公とし、話が進んでいく「遮光」は心の奥になにかを訴えかけるようにも感じる。
共通点があると先ほど述べたがその1つは演技をする、ということだ。僕はよく自分を無色と表現するが、その真意は自分が人の生き方によく影響されるため、自分をよく見失う。というものだ。そのためその見失った自分を否定するために自分の意思で作り上げたキャラクターで生活している。遮光の主人公も今の僕と同様によく嘘をつく。虚言癖と作者はあとがきで書いていたが僕にはただ自分を存在させようとしていただけのようにも感じる。作者の意図以上に、僕はこの主人公の生き方からいろいろなものを感じ取れたと思う。その何かは判然としているため、具体的な言葉にすることができないが、僕の感性はその何かをしっかりと感じ取れたと思う。